「いいな」と思っても何もできないオジサン

 

例えば、相手に対して何らかの好意を持ったとしてその気持ちをどうすればいいのか、伝えるべきか否か、そんなことからして困ってしまう。

18歳なら、甘酸っぱくて大いに結構な話なんだけど、35歳なので困る。

 

前も書いたんだけど、ゲイが集まる飲み会というものに、これまで何度か参加した。

 

規模はそれなりのもので、20人とか30人とかのゲイによる大群が飲み屋に押し寄せる感じになる。

ぞろぞろと店の入口を最初に突破した者から、予約されたテーブルまたは座敷の奥の方へと誘導され、お互いに周囲の様子をなんとなく伺いつつ、ただ何はともあれ着席しないことには始まらないためいそいそと席につく。

そして、自分の両隣や正面や斜め向かいにちょっとでもいいなと思う人がいれば嬉しいような緊張するような気がするし、恋愛感情とか抜きにして単純に話しやすいタイプの人がいればホッとする。そのどちらでもないような人が四方を取り囲む場合もありその時は落胆する。(これは相手も同じことを思っているだろう。笑。そういうのはひしひしと感じる。)

「あー、もう少し5人くらい後ろのタイミングで店に入ればあそこに着席できた・・」とか考えたりもする。

 

どんな状況下でも自分にとってそれなりに楽しいが、それでも、そこそこコンスタントに飲み会に参加する動機となっていたのは、その中に一人とても素敵な雰囲気の子がいたからだ。

歳は自分より2~3歳下。さわやかで親しみやすく、よく気がきいて愛嬌がある。よく飲み、真っ赤になって酔っぱらうが、でもオネエに豹変したりせず(笑)、酔うとより親しみが増していい子だった。「なんて普通に素敵な子だろう!」と思った。たぶん周囲のみんなが彼に対して親しみを持っていた。

 

これは本当に恥ずかしながらではあるのだけど、ゲイである自分が、ゲイの人に対して初めて持った「好意」だった。それまで、学生時代に惚れた相手は全部「ノンケ」であり、成人してからはずっと恋愛感情は誰にも持たなかった。たとえば職場にいる後輩や、ゲイビに出てくる男優とかを、単純に「かわいいなー、ぐへへ」と思うだとかその程度で、それは恋愛とは程遠いところにあった。

 

さてそんな飲み会で好意を持ったその彼は、仕事の都合かなにかで、いつしか飲み会に参加しなくなっていた。今でもたまには顔を出すらしいけど、今度は自分がその輪から遠ざかってしまった。

かくして、初めて好意を持ったゲイである彼に対し、何を伝えるわけでもなく何を仕掛けるわけでもなく、唯一顔を合わせる場であった「サークルの飲み会」という接点も失いつつあり、そうこうしているうちに僕は2年、歳をとった・・。彼の本名はかろうじて知ったが、連絡先は結局知らない。

老けるわけだ。このペースで物事進めていたら寿命がいくらあっても足りない。

 

もし、「いいな」と思った場合どうすればいいのか。

「いいですね」と言えばいいのか(笑) それは違うだろう。

でも言わないよりはマシなのか。

恋愛の意味合いにおいての「好意」を、伝えたことがないので難しい。

 

ただ・・、ちょっとゲイの集まりに顔を出してみるだけでもそこには素敵なゲイがいる、という発見は嬉しいものだった。

世界は広く、この世には素敵なゲイが五万と溢れかえっているに違いない。夢のようだ。よし、外に出よう。早くしないと死んでしまう。

 

そんな話でした。